大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)576号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

原判決が昭和二二年八月から一一月までに支払われた金額が計一二、〇〇〇円であつて、同期間の約定利息の総額が二五、〇〇〇円であり、その差額が一三、〇〇〇円であると判示していることは所論のとおりである。しかし、原判決は右判示に続いて、その挙示の証拠により上告人は昭和二三年一月中に右差額一三、〇〇〇円につき準消費貸借契約を締結した旨認定しているのであるから、前示利息二五、〇〇〇円は昭和二二年八月から同年一二月まで五ケ月分の利息であることが明らかであり、従つて、原判決に前示一一月までとあるは一二月までの誤記であることが窺われるから原判決に許の違法ありというを得ない。それ故論旨は採用できない。

第二点について。

原判決はその判文によつて明らかなように、所論の金五二、〇〇〇円は判示利息並びに判示準消費貸借の元利に充当、支払われたことを認定しているのであつて、従つてその限りにおいて所論のように元金に充当すべき残額の生ずべき余地のないものと認むべきであるから、原判決には所論充当の法則を誤つた違法ありというを得ない。論旨も亦採用できない。

第三点について。

本件消費貸借における月一割の利息が利息制限法に反し、また高率の利息であることは所論のとおりである。しかし乍ら、本件消費貸借の貸主であつた園田岩雄が借主である上告人の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことを原判文上認め得られない、本件においては、利息が月一割という一事だけでは公序良俗に違反したものと断ずるを得ない(大審院昭和八年(オ)第二四四二号、同九年五月一日判決及び昭和二八年(オ)第六九一号、同二九年一一月五日当裁判所第二小法廷判決参照)。従つて、原判決の所論判断は結局正当であり、論旨は右と相容れない独自の見解に立脚するもので採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例